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飛鳥アートヴィレッジ2017
「ほどけたもの語りとの邂逅」
2017年11月18日(土)~26日(日)
出品作家:藤野 裕美子、町田 藻映子、山本 紗佑里
プログラム・コーディネーター:山中 俊広(インディペンデント・キュレーター)
会場:南都明日香ふれあいセンター 犬養万葉記念館
『鬼灯は明かりで、提灯の代わり』
175 × 200 cm
岩絵具、顔料、アルミ箔、麻紙、木材、土
「大事なものは全て土の下に埋まっている」明日香というのはそういう土地だと
取材の初日に役場の職員の方がおっしゃられ、それは今回の取材・制作において重要な位置を占めたように思う。
明日香村には、土葬をしていた頃の墓地がまだ残っているところがある。
既に綺麗に整備された墓地もあるが、私が訪れた地区ではどこも共通して、
遺骨は骨壷には収めず、直接土に埋めるとのことだった。
火葬になっても尚「土に還る」という感覚がそこにはあるような気がした。
お墓や葬儀について語る村の人々の姿勢には、静謐な悲しみの中に、生き生きとした生活感があり
そのコントラストはとてもビビットで
死者の存在をどこか整然と受け止める、堂々とした身構えを感じさせる。
しかし同時に、確かに深い悲しみを抱えてもいる。
お墓にまつわる習慣には、生きている人の死者に対する不思議な距離感がある。
「命は大切だ」と
そんな当たり前のことを、本当の当たり前としてはっきり語ることが
難しいと感じるようになったのはいつからだったか。
私が、なのか。世の中が、なのか。そういうことはいっぱいある。
お墓の話題は嫌がられるものかと思いきや
皆、意外にも生き生きと、そして真摯に語り始め、
更にそのような機会が持てたことを喜んでくださる。
そういう時間には、人の穏やかでまっすぐな優しさが確かにあり
その想いが広く地面に染み込んでいる気がした。
当たり前のことを、本当の当たり前にしていくために
誰かとお墓の話をし合うというのは決して悪くないなと思った。